著作物の利用許諾の分類入門とクリエイティブ・コモンズ
by Creative Commons Japan
プログラムにおけるオープンソースのように、他の著作物についてオープンコンテントという言葉があるのですね(wikipedia)。
既存の著作権の枠だけでは必ずしもとらえきれないこれらの発想や、コンテンツの流通形態の多様化(ネット化?)から、複雑化して、ライセンス関係を完全に理解することは極めて難しくなってますが、ここには無視できない重要性があります。
楽をしたがために他の人の権利を侵害するんじゃ話になりませんからね。
で、引き続き、分類絡みのお話です。
とりあえず、前置き
契約関連の話になるので、どっちかというと今の本業(?)はこちら。
開発日記の中で検討すべき内容ではないのですが、著作権法は結構特殊なので、ほとんど勉強していません。
したがって正面からちゃんと分類するだけの知識も理解もない。
そこでとりあえず既存の外部の記事を援用して今は切り抜けます。
ライセンス絡みはあまり考えずに使っている人も多いでしょうが、私としてはそのうち一度整理して学び、ここで提供したいですね。
著作権の表示の分類
以下、本題。
著作権以外の知的財産権の話はとりあえず横に置いておきます。私が使わないので(^^;
著作者人格権も同様。どのみちライセンスにとどまる問題ではないので。
さて、「法的手段を利用して出版物の創造、流通、検索の便宜をはかる」方法といえば、クリエイティブ・コモンズです。
クリエイティブ・コモンズというと、オープン・コンテント的なものの利用許諾ライセンスということは知っていてもそれ以上のことは正直よくわからないまま目にしていました。
▽クリエイティブ・コモンズの理念(クリエイティブ・コモンズ・ジャパン)
http://creativecommons.jp/learn/
の図をもとに、以下のように理解し、整理してみます。
箇条書きの番号がおかしなことになってますが、そもそもデータベースの分類用の検討なのでご容赦を。
000.著作権に基づく権利行使を原則どおりしますよ、という表示(All Rights Reserved的)
010.著作権管理を委任・信託し、著作権に基づく権利行使をする旨の表示
020.(一部の権利行使をせず)、一般の人に一定の条件に従った利用許諾をしますよ、という表示(Some Rights Reserved)
100.著作権は誰にも帰属していない状態ですよ、という表示(Public Domain)
原則形態である000と100
本来、000と100が対峙する関係にあります。
原則形態なので、不明なところがあったら著作権法とその関係文献を読みましょうということで。
010.著作権管理を委任・信託し、著作権に基づく権利行使をする旨の表示
しかし000だけでは著作物の「創造、流通、検索」に不便だから、定型的に利用許諾をするという発想が生まれます。
例えばJASRACに著作権管理を委任または信託して、JASRACが、著作物の流通等をする業者に個々に利用許諾する、または包括的契約利用許諾契約を締結するというのもこの発想ですね。JASRAC登録楽曲であることさえわかれば、包括的契約利用許諾契約等に基づいてそのまま利用するわけです。
以前はCDに許諾証紙(JASRACシール)が貼ってありました。あのシール、JASRAC登録楽曲であることを示すシールかと思っていたのですが、あれは出荷枚数を把握するためのもののようで(^^; ソフ倫シールと一緒ですね。
特に表示がなくて委任の有無がわからない場合(JASRAC登録楽曲関係はそういうことはあまりないでしょうが)、原則どおり著作権者に原則どおり問い合わせて、著作権管理委任先の案内を受け、そこから許諾を受けるわけです。
020.一般の人に一定の条件に従った利用許諾をしますよ、という表示(Some Rights Reserved)
コンテンツの流通が、特定の形態と業者に限られていた時代であれば、010で十分処理可能だったわけです。
しかし、インターネットを通じて、情報の発信等を一般の人たちも担うようになると、これだけでは処理ができなくなります。
利用者は包括的契約利用許諾契約を結んでいることはほとんどないでしょうから、010だけでは相変わらず著作権者への問い合わせや個別の許諾が必要となります。ひとつひとつの案件で契約を締結するコスト等を考えると管理しきれないから、事実上許諾はできないことになります。
これでは時代やニーズにあった著作物の「創造、流通、検索」ができないことになります。
そこで、個別に契約を締結しないアプローチを考えることになります。
つまり
a.一般の人に一定の条件に従った著作物の利用を許諾します
b.上記条件に沿った利用をする場合、著作権者は一部の権利行使をしません
と表明することによって、著作物の「流通、検索」を促すアプローチです。
しかしこれで著作権者側のコストは削減されても、利用者側のコストは削減しきれません。
利用許諾条件が個別ばらばらだと、その内容を確認し、遵守するコストが残るからです。
(010の場合、包括的契約利用許諾契約の内容でこれをクリアしていますね)
そこで上記アプローチのうち、オープン・コンテント的利用に向けて利用許諾条件を定型化したのがクリエイティブ・コモンズということになると思います(正しいでしょうか?)
その他にも色々とライセンスはあるようですwikipediaが、ひとつひとつ詳しく検討するのはまた別の機会に。
クリエイティブ・コモンズ
で、ようやくクリエイティブ・コモンズです。
設定できる条件は以下の4種。
0.表示(Attribution)
1.非営利(Noncommercial)
2.改変禁止(改変の禁止)(No Derivative Works)
4.継承(同様に共有)(Share Alike)
このうち、「表示」条件は必須(クリエイティブ・コモンズ2.0)です。
残り3つの存否の組み合わせで8通りの設定ができるはずです。
しかし、「改変禁止」と「継承」は同時に選択できないため、同時に使う組み合わせが除かれて、結果6通りになるようです。
「継承」とは、「作り手と同じライセンスで発表すること」をいいます。つまり利用者が、一次著作物をもとに二次著作物を作成した場合にライセンスを「継承」すること(のよう)です。
したがって、「改変禁止」と「継承」はそもそも矛盾する(「改変禁止」により改変していないのであれば、一次著作物そのものだから、二次利用者は一次著作物のクリエイティブ・コモンズライセンスに沿って使用すればいい)ため、双方は同時に選択できないということのようです(多分)。
確かに利用条件は、この4つの組み合わせで大抵できそうです。
クリエイティブ・コモンズというと権利を放棄するパブリックドメインに近いようなイメージがありますが、むしろ著作者の権利を本来的に生かす−お金の生まれるところからはちゃんとお金を取る、お金にはならないけどコンテンツが流通することでメリットが生まれる場合にはどんどん利用を許諾する−ことのできるライセンスだと思います。
以上が、スタンダードライセンス。
「サンプリング・ライセンス」も現在翻訳中らしいので、楽しみです。
ミュージック・シェアリング・ライセンスはどうなんでしょうね?
とりあえずまとめて分類するとこんな感じ。なんとか1桁でおさまった(拡張されたらおしまいだけど)
0 表示
1 表示−非営利
2 表示−改変禁止
3 表示−非営利−改変禁止(=ミュージック・シェアリング・ライセンス)
4 表示−継承
5 表示−非営利−継承
6 (表示−)サンプリング〔サンプリング・ライセンス〕
8 (表示−)サンプリング・プラス〔サンプリング・ライセンス〕
9 (表示−)非営利−サンプリング・プラス〔サンプリング・ライセンス〕
▽クリエイティブ・コモンズ・ジャパン
http://creativecommons.jp/
▽サンプリング/リミックスを愛する僕らのクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(ドラフト版)(Creative Commons @ iWATAMA)
http://iwatama.com/cc/
クリエイティブ・コモンズのメタデータ
RDFに基づいて、クリエイティブ・コモンズのライセンスを示すメタデータの規格があります。
検索・共有・管理がネット上で(サーバ等を通じて)機械的に処理できるようになってるわけですね。
ステキです。
ただし、「作品のメタデータに(1)Dublin Coreを用いた作品概要;(2)C.C.メタデータ語彙を用いたライセンスの概要;の2つを記述することを推奨して」いるそうです。
▽クリエイティブ・コモンズのメタデータの記述(The Web KANZAKI)
http://www.kanzaki.com/docs/sw/ccm.html#ccm-sample
Dublin Core(ダブリン・コア)ってこういう用途でも(というか、こちらが本来か)使われるのですねぇ。
クリエイティブ・コモンズプロパーの話はここまでっぽいのでここで一区切りにして、後ほどDublin Coreとあわせてクリエイティブ・コモンズのメタデータの記述について検討します。